研究概要 |
グラッシーカーボンを基材とする酸化物分散電極によって電極反応が活性化される物質の分類を試みた。水酸基を含む種々の芳香族化合物の酸化反応およびニトロ化合物の還元反応に特に効果が大きく、著しく電流感度が増加することが分かった。酸化物としては、酸化セリウム,アルミナ,酸化クロム,酸化ニッケル,酸化コバルトで特に効果が著しかった。しかし、酸化物の半導体特性と電極反応の活性化との間に相関は見られなかった。また、酸化物のPZCよりはむしろ電極活性物質の電離度の効果の方が大きかった。電極基材の仕事関数との関係については、用いたグラッシーカーボン以外の電極基材のポテンシャルウインドウが狭いという制約があり充分な検討を行うに至ってないが、電極活性との間に直接的な相関は認められなかった。 電流値の特性から拡散律速ではなく、吸着波であることが分かったため、バルクでの共沈挙動を検討した。その結果、グラッシーカーボン粉末および酸化物粉末単独では共沈率は低く、吸着波が生じるとは考えられなかった。ところが、グラッシーカーボン粉末と酸化物粉末とを乳鉢でこすりつけると共沈率が著しく高まり、電極基材と酸化物との相互作用による効果であることがわかった。しかし、共沈率が高いのに電極反応を活性化しない酸化タングステン,酸化亜鉛などの酸化物が存在することから、バルクでの吸着現象と電子移動過程の二段階の電極反応機構であることが明らかになった。 この酸化物分散電極は、実用的には生体関連物質に対する化学修飾電極として有用であり、例えば【10^(-8)】Mの尿酸を検出することも可能である。 これらの成果はすでに「環境分析と新検知器国際会議(昭和61年10月10〜12日,京都)において発表したが、さらにJ.Electroanal.Chem誌に投稿準備中である。
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