キイロショウジョウバエで見出された一系統、gyn-F9は、雄不妊突然変異系統ms(3)K81雄と交配すると、きわめて高率で単為生殖個体を産生することがすでに明らかにされている。本研究では、gyn-F9系統の未受精卵が2倍体に復帰する仕組みを細胞遺伝学的手法により明らかにすることを目的とした。 1.単為生殖に係わる遺伝子 gyn-F9と野性型系統との間の染色体置換系統および組み換え個体について単為生殖能力を調べた結果、gyn-F9の特異な性質は、第2および第3染色体のいずれも中央部に座位を占める2つの劣性突然変異遺伝子が関与し、両座位が同時に劣性ホモ接合のとき、単為発生を高率でおこすことが明らかとなった。 2.2倍体化の遺伝的機構 複数の劣性可視突然変異をヘテロでもつ雌から得られた単為生殖個体の遺伝子型を調べた結果、未受精卵の2倍体への復帰は、第2減数分裂で作られた4個の卵原核のうち、2個の非姉妹核同志が融合することによっておこることが判明した。 3.2倍体化の細胞学的機構 卵原核の融合がおこる原因としては、減数分裂の過程に何らかの異常があるためとするのが最も考えやすい。そこで、gyn-F9の性質を支配する2つの遺伝子のそれぞれについてホモ接合系統を作成し、その減数分裂を直接観察することを試みた。しかし、ショウジョウバエの減数分裂は、産卵直後にきわめて短時間におこるため、その観察は困難をきわめ、現在のところ、明確な結論を出すに足る観察例を得るに至らないため、実験を継続中である。
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