ササ葉上に発生する6種のハダニと6種の捕食性ダニ類についての4年間のデータをコンピューターに入力した。データの主要部分のディスクファイル化を完了し、上記ハダニのうちで亜社会性を持つことで注目されているタケスゴモリハダニの変異個体群の長毛型についての繁殖と野外生態について分析し、行動及び個体群の分布様式と併せて考察したところ、この種ではきわめて高い頻度で近親交配が生じており、これが亜社会性の発達に深い関連をもつことが判明した。なお、この点については既に原著論文として印刷中である。一方、上記タケスゴモリハダニの別個体群である中毛型と上記の長毛型との巣のサイズの変異は、前者においては巣の分散による天敵からの逃避、後者においては亜社会性の発展に深く関わっているという予測が、コンピュターシミュレーション及びVTRによる行動の研究によって明かになりつつある。 一方、ササ上に生息する別のハダニ類については、ファイル化されたデータの解析から、それぞれのハダニが寄生植物上でどのように分布するかを決めている要因は、葉の微小な物理的環境であり、中でもササ葉に生える葉面毛の密度が重要であることが明かとなった。 個体群動態を分析した結果、現段階でハダニの個体数の変動パターンには種間に差が認められ、タケスゴモリハダニ種群と残る5種のハダニとでは位相がずれている場合のあることが判明した。 さらに、本研究で行動分析のために開発した微小測点平均気温測定器を用いて、従来汎世界的に用いられてきたハダニの生活史及び行動研究用の飼育法を検討したところ、方法に重大な欠陥のあることが判明した。これは本研究の副産物と見なされる成果であるが、この点については現在原著論文として投稿中である。
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