研究概要 |
トンボの縄ばり防衛行動については、ニシカワトンボ,オオカワトンボとその他のカワトンボ類およびコナカハグロトンボ(ミナミカワトンボ科)について、直接観察とビデオカメラで記録し、これをスロービデオ装置で再生して、これ等のトンボについて行動分析を行った。その結果、縄ばり防衛行動は分類学的な類縁関係を超えて、共通する幾つかの基本パターンに分けられた。すなわち、縄ばり防衛行動が多様化しているカワトンボ類を中心にすると次のようになる。(A)縄ばり雄が侵入雄を一方的に追う行動、(B)縄ばり雄同士が互に追い合い、向かい合ってから急に方向を変えて戻る行動、(C)ある限られた範囲で輪を描く行動、(D)前の行動に続いて、次第に上昇し、互いに平行になって停止飛翔しながら急激に上昇したり(約30cm)、もぐり込んだりする行動、(E)前の行動をしている時に、両個体が急激に10cm位上昇する行動。勿論これ等の行動は種によってデリケートに異なり、例へば、コナカハグロトンボでは(B)と(C)の行動で体のローリングを伴い、これまで他に例を見ない特異的な興味深い行動も観察された。 行動の観察・記録を行った種は、採集して必要な処理をして研究室に持ち帰り、電気泳動装置でアイソザイムパターンの分析を行った。トンボの胸筋をすりつぶし、エステラーゼ・アイソザイムを測定した結果、多数のバンドに分離された。泳動先端より4本のバンド(【E_1】〜【E_4】)の変異により、ニシカワトンボとオオカワトンボの雌および雄の各タイプについて分離することができた。 一方、ショウジョウトンボを九州本土の各地と種子島以南の南西諸島で採集し、染色体の分析を行った結果、トカラ列島を境に以北と以南で染色体数が異なることが明らかになった。この事は、日本には少なくとも二亜種が生息していると考えられ、新知見となる。
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