研究概要 |
酵母の性フェロモン,α-ファクターは接合に必須であり、細胞周期のG1期停止など相手型細胞に多様な変化を引き起こす。高濃度(【10^(-8)】M以上)のα-ファクターは細胞に接合管様の突起構造を誘導し、細胞は一方向性の伸長成長を行なうようになる。この形態変化と対応して細胞内に【Ca^(2+)】の取り込みが見られることを見い出した。【Ca^(2+)】イオンの動態が、この成長様式の変化のシグナルとなっていると考えられる。その機構の解明と目的として研究を進めているが、本年度に得られた成果は次の3点に要約される。 (1).αファクターによる形態変化の微細構造を日本女子大、馬場美鈴氏との共同研究で明らかにした。α-ファクターで40〜50分細胞を処理すると細胞内に45〜100μmの不均一な膜小胞が150〜200個形成される。これらの小胞はゴルジ体によって形成されると思われるが、細胞内に一様に分布する。突起形成の開始に伴って小胞は細胞の一端に集合し、その一端で恐らく細胞膜と融合するものと思われる。 (2).αファクターによって突起形成を行っている細胞を、ローダミンファロイジンなどにより染色を行った結果、突起の先端部分にアクチンのドットが形成されていることが明らかとなった。アクチン繊維が小胞の一方向の輸送を始め、先端成長過程に重要な役割を担っていることが強く示唆される。 (3).細胞周期の変異株として同定されている多数のcdc株のうち、G1期で停止ししかも制限温度下で接合能を保持している変異株としてcdc36,37,39,28が知られている。この中でcdc36,と39は制限温度下に培養を続けるとαファクター処理と同様な突起様の構造を形成し伸長成長を行う。この時もまた同様に細胞内に【Ca^(2+)】イオンが細胞内に取り込まれる。この形態変化も又、【Ca^(2+)】イオノファアA23187の添加によって阻害される。
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