研究概要 |
酵母(S.cerevisial)細胞分裂は出芽と呼ばれる特異な様式で行われ, 細胞の成長は出芽部分-娘細胞に限定される. 一方半数世代の酵母細胞が互いに分泌する性フェロモンは, 相手型細胞に対して特異的な形態変化を誘導する. 接合管様の突起形成過程は, 細胞表層の成長様式の制御機構を解明する上で優れた実験系であることが期待される. 本研究はαファクターによる細胞の形態変化の誘導機構を明らかにすることを目的として行われた. 真核細胞の細胞表層の成長過程は, 細胞膜と細胞壁を形成するための膜小胞の方向性をもった輸送と特定の部位での膜への融合現象であると考えることが出来る. 事実瞬間凍結置換法を用いたαファクター処理細胞の微細構造変化の解析の結果, αファクター処理後約50分後に細胞内に約90〜110nmの膜小胞が誘導され, 突起形成の開始と同時にその突起部分に小胞が集中し始める. この膜小胞の動態と細胞骨格との関係を解析するために, ローダミンファロイジンを用いた蛍光顕微鏡観察を行った. その結果, αファクターはFアクチンの組織化に大きな変化を及ぼすことが明らかになった. 低濃度のαファクターで処理された結果, 球状で成長の方向性を失った細胞は, フィラメント様のアクチン繊維が細胞内に一様に広がっている. 一方突起形成の開始期の細胞にはアクチン繊維が認められず, 突起の開始部位の真下にアクチンのドット状の構造が生じる. 突起形成に伴ないこの点を中心としてアクチンドットが次第に増加し, 前述の膜小胞の細胞内分布とよい一致をますようになる. 微小管の重合の阻害剤は, αファクターによる突起形成, Ca^<1+>の細胞内流入を共に阻害しなかった. 従ってアクチンが成長様式の変化に重合な役割を担っているものと思われる. アクチンの細胞化とCa^<2+>イオンの細胞内流入についての相互関係に関して現在解析を進めている.
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