研究概要 |
葉緑体の光化学系【II】に存在する3種類の表在性蛋白質(33-,24-及び18KDa蛋白質)は光合成の水分解/酸素発生に関与しているが、本研究ではまずこれらの蛋白質の精製法の改良を行い、短時間のうちに高収率で蛋白質を精製する方法として以下に述べる3種類の方法を開発した。(1)33-kDa蛋白質についてはホウレンソウ光化学系【II】標品を予め1M NaCLで洗った後ブタノール/水二相分配を行い水相に分配される33-KDa蛋白質を1ステップの陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけるという方法で精製した。(2)24-KDa蛋白質と18-kDa蛋白質は従来繰り返しカラムクロマトグラフィーを行なわなければ充分精製することが出来ず、又蛋白質の収量もその為に大きく低下したが、光化学系【II】標品をブタノール/水二相分配にかけた後の水相を直ちに陽イオン交換カラムを用いたHPLCにかけることによって3種類の蛋白質をmgオーダーで同時に得ることが出来た。(3)メタノールとNaClで光化学系【II】粒子を洗うことによって18-KDa蛋白質を選択的に膜から遊離させることが可能になった。この方法と従来より用いられてきたNaCl処理、Tris処理を用いることによって全くクロマトグラフィーを使用すること無しに大量に3種類の表在性蛋白質を精製することができた。次に酸素発生系のMn原子と3種類の表在性蛋白質の光化学系【II】における存在状態をブタノール/水二相分配法によって検討した。その結果、光化学系【II】の反応中心あたり4原子存在するMn原子のうち2原子は親水的な環境に有り、しかもそのうちの1原子が33-KDa蛋白質と構造的に密接な関係にあること、もう1つの親水的な環境にあるMn原子は33-KDa蛋白質に加えて24-KDa蛋白質によってもその存在状態を規定されていること、3種類の表在性蛋白質はいずれも直接光化学系【II】の膜(恐らく反応中心色素蛋白複合体)との結合部位を有すること等が明らかとなった。
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