研究概要 |
根粒バクテリアは、その窒素固定能発現に先立ち、宿生植物への根粒形成が不可欠である。クローバを宿主とするRhizobium trifolii 4S(野生型,【Nod^+】,【Nif^+】)の変異株Qnlは【Nod^+】,【Nif^-】であり、クローバに形成する根粒形態は4S株により形成されるものとはかなり異なる。しかしQnl株は異宿主であるインゲンにも根粒を形成することを見出した。この根粒は、外観すなわち色・形・大きさなど、インゲン菌(R.phaseoli CNDP)により形成された正常根粒とほぼ一致するものであった。さらに、走査型・透過型電子顕微鏡を用いて組織学的に検討したところ、これも正常根粒との差違は認められなかった。根粒内のバクテロイドは正常なインゲン根粒の場合と同様、遊離型菌の形態と比べて変化は認められず、本来、クローバ根粒菌がクローバに形成した根粒内で生ずる、バクテロイド分化に特徴的な菌体積の肥大化,Y字型・クラブ型への形態変化も確認されなかった。以上の諸現象は、クローバへの根粒形成変異株である。Qnlの根粒形成遺伝子は、インゲン植物内では正常に発現していることを意味し、また、根粒内でのバクテリア→バクテロイドへの分化に伴う菌の形態変化は、植物側の支配によることが予想される。しかし、Qnl株で形成されたインゲン根粒にはレグヘモグロビン合成が行われていないことが免疫学的に確認され、アセチレン還元法により窒素固定能を示さないことが立証された。 現在、根粒形成遺伝子のクローニングに先立ち、遺伝子ライブラリーの作製を継続中である。遺伝子ライブラリーはQnl株の62MdプラスミドのSau3aI断片をベクターに結合させE.coli HB101を宿主菌として保存している。以後、このライブラリーより、根粒形成遺伝子、またQnl株の有する広宿主域に対する感染能を確定,選別し、単生窒素固定菌への導入・発現を計画中である。
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