研究概要 |
はじめに、孔辺細胞において青色光に反応して【H^+】放出を行う実体を【H^+】-ATPaseと考え以下の実験を行った。ソラマメ葉孔辺細胞プロトプラストから膜画分を調製しこれを用いてATPase活性を測定した。その結果、孔辺細胞膜画分は高いATPase活性を有し、この活性は【NO^--3】およびVanadoteに阻害された。この事は、この膜画分に液胞膜および原形質膜由来の【H^+】-ATPaseが存在することを示している。原形質膜由来と考えられる【H^+】-ATPaseは、ATPに高い基質特異性を持ちそのKmが0.5mMで、原形質膜【H^+】-ATPaseの阻害剤Diethylstilbestrol,SH阻害剤P-chloromycetinbenzoic acidおよび【Ca^(2+)】イオンに阻害された。また、高い酵素活性を得るには【Mg^(2+)】が必須であったが 【K^+】の効果は無かった。酵素活性の至適pHは6.8であった。以上の酵素的性質は、高等植物細胞で報告されている原形質膜【H^+】-ATPaseの性質とよく似ており、孔辺細胞の原形質膜に【H^+】-ATPaseが存在することを示している。さらに、プロトプラストのままでの酵素活性はリゾレシケン添加により800μmol/mgchehに達し、この活性は以前報告した青色光照射によるH 放出を説明するに十分な活性であった。次に、このATPaseが青色光に反応するか否かを(1)膜画分を青色光照射しながら(2)プロトプラストが【H^+】放出する条件で測定したが青色光の顕著な効果は認められなかった。従って、青色光に反応して【H^+】放出を行う物質が原形質膜の【H^+】-ATPaseか否かはさらに研究が必要である ついで、青色光パルスに依存した【H^+】放出のエネルギー源について調べた。光合成電子伝達系の阻害剤DCMOは10μMで、わずか(8%)阻害した。一方、呼吸阻害剤KCNは50μMで60%以上阻害した。同じく、Na【N_3】も大きく阻害した。以上の結果は、少なくとも青色光パルスに伴う【H^+】放出のエネルギー源は酸化的リン酸化が主であることを示している。
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