研究概要 |
1.分離培養および株保存施設より譲受した6属12種20株の単細胞性紅藻の形態・微細構造・光合成色素分析・生育特性(塩分濃度に対する増殖率, 紫外線耐性etc)・体構成タンパクの二次元電気泳動パタン解析を実施した. 2.これらの結果に加えてこれまで報告されているデータを考慮に入れ, 単細胞紅藻の類縁関係を追究した. そしてそれらを4系統群(evolutional line)と1祖先群(ancertral stock)に識別した. Cyamdium, line(星型葉緑体→板状, Phycoerythrin欠, 河口→河川域→温泉・泉)Rhodosorus-line(カップ状突出ピレノイド葉緑体B-phycoerythim, 海域)Rhodella-line(裸出・ケラコイド欠ピレノイド・星状葉緑体, B-phycoerythim, 汽水→海域), Rhodospra-line(裸出・曲折チラコイド侵入ピレノイド中空葉緑体, C-phycoerythrin, 汽水・海岸)とPorphyndium-stock(星状葉緑体, B-phycoerythrin or phycoerytrin欠, 海→河川→陸上)で, 系統群は葉緑体・核の形状および配列に共通点と形態上のクラインをもつこと, 光合成色素は共通, 生育環境は類似し, 塩分濃度・増殖も似る. 一方祖先群は葉緑体・核の形状・配列は共通・類似し, 光合成色素系は変異に富み, 広い分布域を示すことが認識された. 3.これらの系統・祖先群毎の種間の比較を体構成タンパクの二次元電気泳動法で解析, 多糖類がタンパク抽出の邪魔をしてその除去方法に苦労したが, どうにか泳動パタンが得られるまでに達した. この結果が本格的に得られてから種間の分類学的解析に取り組む, 以上の経過・結果の一部を日本植物学会, 国際植物学会議, 日本藻類学会に口頭・展示発表した. また63年8月の国際藻類学会にも発表を計画している. またこの研究中に発見したRhodella属の1新種にR anulomayaritaと命名し, 近々論文投稿の予定である. 無性生物群の種を認識する第一歩は形態・微細構造の精査にもとづく系統・類縁の解析で, その点についてはある程度の成果を得たと自負している.
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