研究概要 |
不完全菌酵母Candida albicansおよびパン酵母Saccharomyces cerevisiaeの核分裂について電子顕微鏡による微細構造的研究をおこなった。 (【I】) パン酵母S.cerevisiaeの核分裂の凍結置換-電顕観察による研究。 凍結置換法によると、在来法に比べて明らかに細胞微細構造を明確に示すことができたのは、分裂酵母の場合と同様であった。得られた主な所見としては、(1)複製したSPB,あるいは紡錘体極にあるSPBは、径約160mmで、少なくとも4層から成る円板状構造である。(2)両極のSPBを結ぶ連続微小管に加えて、SPBより放射状に伸び、クロマチン線維に結合した染色体徴小管を確認できた。(3)核分裂中後期、核が球形から楕円体に伸長するとき、紡錘体微小管の伸長が先行し、核内に円弧状ないしS字型に発達する。(4)分裂の各時期で核内クロマチン領域をトレースし三次元再構成をおこなったところ、核分裂過程においてクロマチン構造の凝縮がおこらないことが確かめられた。以上の所見のうち、(2)(4)は、これまでの研究を支持し、(1)(3)は、従来のスフエロプラスト化固定では得られない新知見であり、とくにS字型紡錘体の観察は、S.pombeの場合と共通であり、分裂における微小管の伸長による力の作用が重要であることを示唆する。 (【II】) 不完全菌酵母Candida albicansに関する研究。 これまで分裂酵母やパン酵母に適用してきた凍結置換法では良い試料を作製することが困難であり、とくに細胞骨格構造を選択的に保存する目的で固定置換の条件を検討した。従来の-80℃アセトン-Os【O_4】置換方法の他に、-80℃メタノール-グルタールアルデヒド置換して-20℃アセトン-Os【O_4】固定という方法において、時間と温度上昇条件を変えて試料調整した。メタノール置換では、細胞質の一部が抽出され網目状構造を示したが、微小管は保存されることが分った。
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