研究概要 |
1.初年度は、西表島と沖縄島北部を中心に、さらに久米島でも調査採集を行い、多数の標本を整理し収蔵するとともに、重複品を国内外の研究機関との交換用として備えつつある。 2.台湾大学からの900点を始めとして、グァム,フィリピン,中国,およびその他、数個所の国内外の大学研究機関からも多数の交換標本が寄せられ、その整理作業を続行している。 3.この補助金の交付以前から培養していたスミレ属の1種が新種と判り、Viola stoloniflora Yokota et Higaオリズルスミレと新名を用意した。この新種の基準産地は、すでに水没した沖縄島北部の渓流で、現在では辺野喜川ダムとなっている場所であり、数年前に得られたものである。小形のスミレで匍匐枝を出すのが特徴で、折鶴を連想させる。近く植物学雑誌に投稿を予定している。 4.沖縄島に産するボチョウジとナガミボチョウジの分布と形態的分化を明らかにするため、さまざまな角度から観察を継続している。その一端として染色体数で判ったことは、それぞれ2n=42,2n=84で両種は倍数関係にある。ナガミボチョウジの2n=84は、これまで報告されたボチョウジ属のなかでは最大のものである。また、形態的に両種の中間型を示すものが散見され、そのうちの1株で2n=63を算定し、これを両種の雑種と推定した。この雑種では種子は形成されず不稔とみられるが、植物体の形態観察とともに、さらに詳細に検討したい。 5.他研究機関の標本も検する必要があり、初年度は3月中に鹿児島大学農学部での閲覧を計画している。
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