研究概要 |
四肢パターン形成の基本となる肢芽中胚葉細胞域の部域特異性について鶏胚を用いて各方向から研究した。その結果、既に実験形態学的方法で知られていたZPA(極性化活性域)以外に、いくつかの部域的差異を示すことができた。得られた知見は次の通りである。 1.器官培養法によって前後軸方向での増殖についての部域性を明らかにした。肢芽を前後軸方向に4等分して得たフラグメント(前から、1,2,3,4,とする)を単独で培養すると、2,3が増殖して軟骨塊を形成するのに、1,4は殆んど増殖しない。ところが1と4を組合わせて培養すると増殖して軟骨形成もする。これを【^(35)S】-硫酸のコンドロイチン硫酸への取込みの測定、DNAの微量定量により確認し、さらにニワトリ-ウズラのキメラ胚を用いることにより、増殖するのは1のみであることを明らかにした。これは4から出る増殖因子に1が反応したものと考えられる。なお、この反応にはAER(外胚葉性頂堤)は不用であるが、外胚葉はどちらかのフラグメントにあることが必要である。 2.細胞培養により、上記の部域性を更に解析した結果、4の増殖因子に対する反応性は1で高く、2,3,4と後方に行くに従い低くなることが示された。つまり反応性の勾配が得られた。同じ勾配はFGF(繊維芽細胞増殖因子)に対する反応性についても見られたが、血清増殖因子に対する反応性は、2,3が高く1,4が低いという別の勾配を示した。 3.部域特異的なモノクローナル抗体は、既に得られたAV-1と相補的なものを探しているが、未だ得られていない。また二次元電気泳動により肢芽に特異的なたん白質スポットを数種得て、その分布を現在調べている。
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