研究概要 |
バフンウニ胞胚をCa,Mg-欠除人工海水で処理すると, 細胞凝集活性をもつ細胞凝集因子複合体が抽出される. これをDEAEセルロースに吸着させ, 0.5MNaClで溶出すると, 細胞凝集活性をもつ糖蛋白部分が多糖部分から分離して溶出される. これをSepharose 4B, トヨパールなどによって精製した. この蛋白はCa^<2+>の存在下で細胞凝集活性を示すが, それ自体Ca結合蛋白であることが, 放射性Ca^<2+>を用いた実験で示された. Ca^<2+>との結合はpH依存性で, pH8で極大となり, pH4以下では, ほとんど結合活性を示さない. また海水のpH(pH8)におけるCaの解離定数は3.1×10^<-4>Mである. このpHプロフィールがらγ-カルボキシルグルタミン酸(Gla)の関与が推定されたが, アミノ酸分析の結果 0.5%のGlaが含まれることがわかった. また, Cd^<2+>, WarfarinなどのGla阻害剤が正常な細胞接着を妨げることから, Glaが直接細胞接着に関与していることが示唆された. 一方, 同位元素で標識したCa結合蛋白の, 解離細胞への結合のpHプロフィールを, Ca^<2+>の存在下, 非存在下で解析した結果, この蛋白はCa^<2+>を介さない別の機構によって解離細胞に結合していることが示された. また, バフンウニ胞胚はWGAによって種特異的に解離することが明らかにされ, この蛋白はCa結合活性と同時にレクチン活性をもつことが示唆された. ハプテン阻害実験を試みたところ, このCa結合蛋白による解離細胞の再凝集はGlcNAcによって特異的に阻害された. また, この蛋白はWGAによる血球凝集反応を競合的に阻害した. さらに, 解離細胞から単離されたWGAリセプターは, Ca結合蛋白と相互作用し, 細胞接着に異常を引き起こすことが明らかにされた. 従って, この蛋白はCa結合活性と同時に, GlcNAcを認識するレクチン活性を同一分子内にもち, この両者の働きによって細胞と細胞とを結合させているものと考えられる.
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