研究概要 |
本研究の主要テーマは、マウス胚発生時における器官の形態形成(主として唾液腺)、特に上皮でのクレフト形成には細胞外物質であるコラーゲンやある種のプロテオグリカンが必須であることの証明であった。この点に関して今年度中に得られた成果を順を追って述べる。 1.透過型電子顕徴鏡を用いた観察によって、クレフト底部にはコラーゲンの繊維束が確実に存在することが明らかとなった。 2.このコラーゲンの種類を同定するため、ウシ歯髄培養液から抽出精製した間質性コラゲナーゼを用いて調でたところ、クレフト形成に必要なコラーゲンは基底膜型ではなく、繊維を形成しうる間質型であることを証明した。 3.このような型のコラーゲンを間充織細胞が牽引できるかどうかをコラーゲンゲルで調べた結果、これが可能であることを示した。 4.我々が既に提出した仮説では、クレフト形成に細胞分裂は不必要である可能性が高かった。これを証明するためX線照射実験を行ったところ、予想通りクレフト形成は阻害されなかった。 5.唾液腺の形態形成過程をTVカメラとビデオ装置で記録した結果、間充織細胞は群となって、予想外に大きく運動しており、クレフトを作る時には、これらが上皮を対角線に巻いていることが確認された。これは我々の仮説を支持しているように思われる。 6.いくつかのプロテオグリカンに特異的な分解酵素を使った実験の結果、プロテオコンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸などはクレフト形成に直接は関係ないようであるが、組織にごく徴量しか存在しないプロテオヘパラン硫酸はクレフト形成、また上皮の成長に重要な役割を果していることが示唆された。なお、肺上皮のクレフト形成はそれ程解明されていないが、今後上に述べた方法を肺にも適用する予定である。
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