研究概要 |
ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)の光感覚に関与するとされるジョセフ細胞, ラメラ細胞及びヘッセ器官が電子顕微鏡と組織螢光法観察により調べられた. ジョセフ細胞は未端部の微絨毛部, 細胞部, 細胞質突起の3部分に分けられる. 暗順応によって, 個々の微絨毛は細くなる一方, 数が増加して規則的配列になる. 組織螢光法による検索の結果, 微絨毛集合部に視物質発色団であるレチナールの存在を示唆する特異螢光が認められた. ラメラ細胞は9+O型の軸系を持ち, 絨毛から派生したラメラ部, 細胞体, 細胞質突起の3部分からなる. 光依存性微細構造変化及びレチナールの特異螢光は, この細胞には認められなかった. 光感覚細胞としての機能を示唆するいくつかの特徴を示すが, 現段階ではその是非を評価し難い. ヘッセ器官は色素細胞と受容細胞から構成される. 受容細胞はジャセフ細胞, ラメラ細胞と同様, 微絨毛部, 細胞体, 細胞質突起の3部分からなる. 明暗処理においてジョセフ細胞同様, 微絨毛微細構造に影響が見られた. 組織螢光法検索によりレチナール様の特異螢光も認められた. 以上の結果よりジョセフ細胞とヘッセ器官は, その微絨毛部にロドプシン様物質を含み, 光感覚能をもつことが示唆された. これらの結果から, 受容膜ターンオーバーについて進化系列絨毛かたと感桿型の間で基本的差異が, これら両者を同時にもっている同一動物であるナメクジウオで具現されているとも考えられ, 次のステップへ向けての大きな基盤が得られた.
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