ツメガエル受精卵における外来性DNAの挙動に関する研究は注入近年盛んになってきたがそれは二つに大別される。ひとつは注入DNAの染色体への組み込みをめざす実験であり、他は初期発生解析の手段としてのDNA注入をおこなうものである。ここでは後者の立場に立っていくつかのDNAの注入実験をおこない、次のような結果を得た。 (1)バクテリオファージ入のDNAを注入した受精卵では核様体が形成されることを発見し、これがその後の卵割期間に娘割球へ分配されてゆくことを見出した。ここでこの核様体はオートラジオグラフィーの結果から、注入したλDNAのまわりに核膜構造が集まってつくられるものであることが判明した。つくられた核様体の内側は均一な構造であり、正常な細胞の核質とは明らかに異なっていた。この核膜構造には電顕的にみて正常核のそれと区別がつかないような核孔複合体を備えている。またその核孔複合体は時に未完成なまま膜構造に組み込まれたような所見が得られた。 (2)ツメガエルγDNAを含むプラスミドpXlr101Aを注入した受精卵の場合はこのDNAは環状構造のまま維持されることがわかった。またそれは注入された直後はいわゆるclosed circularの構造をしているが、発生過程で次第に切断を入れられて、いわゆるopen circularの構造に変ってゆくことが明らかとなった。これは筋肉応答期の頃に次第に胚体から失なわれることがわかった。 (3)ツメガエルのγDNAクローンの場合、このDNAの注射をおこなった胚を2週間飼育しオタマジャクシの段階にまで育てた。そしてオタマジャクシからDNAを抽入しEco RIで消化し、pBR322をプローブとしてササンブロット分析をおこなった。その結果、注入したclosedcircularのプラスミドからは得られないようなDNA断片が得られ、これがpBR322の配列をもっていた。よってpxlr101Aが胚のゲノムに組み込まれていたことが考えられた。
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