軟体動物の卵膜ライシンは、受精の際に精子の先体反応に伴って溶出されて卵膜を非酵素的に溶解する。最もよく研究の進んでいるバティラの卵膜ライシンは、我々の手で全アミノ酸配列を決定され、活性部位も含めた立体的配置も明らかにされている。卵膜上のライシンの結合部位を明らかにする事でライシンの卵膜溶解機構を分子レベルで明らかにしようとして、次のような実験を行なった。 バテイラライシンは、卵膜と化学量論的に反応し、不可逆的に結合する事が知られているので、この性質を利用して卵膜のライシン結合活性とした。バテイラ卵膜は、アルカリ分解する事によって可溶化される。この可溶化された卵膜は元の卵膜と同様にライシンと不可逆的に結合する能力をもつ。この可溶化された卵膜をプロナーゼ消化するとこの結合活性は消失し、Staphylococcus aureus V8プロテアーゼ消化、過沃素酸々化及びアーモンドのGlycopeptidase消化ではこの活性は保持された事から、卵膜のタンパク部分がライシン結合部位である可能性が高い。V8プロテアーゼ処理した卵膜を細分画し、それぞれの分画が結合活性を持つか否かを検べ、このうちの活性を持つ分画をプロナーゼ処理する事でそのペプチド部分のちがいを明らかにしたいと思っている。卵膜中の糖部分も何らかの働きをしているように思われるので、これについても詳しくデータを検討中である。
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