研究概要 |
申請者は、動物界で最も単純な神経系、ヒドラの散在神経系において、位置に依存した神経ペプチドの発現の可塑性(Position-dependent plasticity of neuropeptide expression)の証拠として、FMRFamide含有神経細胞について、そのような可塑性を示した(Koizumi and Bode,1985,1986,a,b)。昭和61年度の研究計画は、1.そのような可塑性が他の神経ペプチド含有神経細胞についてもみられるか?2.そのような可塑性が、ヒドラの神経細胞に特異的な単一クローン抗体で限定される神経細胞のSub-populationについてもみられるか?3.FMRFamideの研究の中で考えられた異なったタイプの可塑性、神経節細胞から感覚細胞への変換のような可塑性がみられるか?の3点であった。 1については、同様の可塑性がvasopressin含有神経細胞についても観察され、神経ペプチドの位置に依存した発現がヒドラの成熟した神経系において、より一般的な現象であることが示された。 2については、頭部の感覚細胞に特異的な単一クローン抗体TS33を用いて、単一クローン抗体の抗原についても神経細胞の位置に依存した可塑性がみられ、ヒドラの成熟個体の神経網における神経細胞の位置に依存した可塑性は非常に一般的な現象であることが示された。 3については、頭部の感覚細胞に特異的な単一クローン抗体TS33と体全体の神経節細胞に特異的な単一クローン抗体TS26を用いて、しかも両者のIgタイプの違い(IgGとIgM)を利用した螢光抗体法の二重染色を用いて体幹の神経節細胞が口丘部に位置を変えると感覚細胞に変換することが示された。 2,3の結果については、Plasticity in the nervous system of adult hydra【II】.Conversion of ganglion cells in body column to sensory cells in hypostomeという題の論文を、1の結果については、同シリーズの【III】、The position-dependent changes of Vasopressin-like immunoreactivity expressionという題の論文を公表予定である。
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