研究概要 |
1.ハムスター骨髄細胞長期培養系のinitial phaseにおける培養液・ポークウィードマイトジェンで刺激した脾細胞培養液に, 骨髄の赤芽性前駆細胞(BFU-E・CFU-E)によるメチルセルロース培地中でのコロニー形成を顕著に抑制する活性が認められた. 2.抑制は培養液の濃度に依存するが, 高濃度のエリスロポエチン(>2unit/ml)存在下では, 10%の濃度でも活性は認められなかった. この点で, エリスロポエチンの濃度に関係なく抑制活性を発現するインターフェロン類とは性格を異にする. 3.骨髄および脾の活性は, 熱処理により失活する・ゲル濾過で高分子領域に溶出されるなどの点で類似しているが, 脾の活性は4°C静置で上昇する・骨髄の活性は固定化トリプシン処理で完全に失活するが, 脾の活性はやや抵抗性があるなどの点で微妙な相違が認められる. 4.骨髄非赤芽系細胞は上記の如く赤芽性前駆細胞の増殖・分化を抑制するにもかかわらず, 終末分化した赤芽性細胞におけるヘモグロビン合成を強力に促進することが判明した. 胎児卵黄包および成体骨髄における赤芽性細胞について調べたところ, この促進効果は胎児型ヘモグロビンについてもみられるが, 成体型ヘモグロビンについてより顕著にみられた. 細胞自体のみならず, 1.のような培養液も有効であった. 5.これらから考えて, 骨髄および脾における非赤芽系細胞は, なるべく幹細胞の分泌回数を減らし, 分化した細胞を有効に活用する方向で作用していると考えられる.
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