研究概要 |
周生期に投与された性ホルモンのマウス標的器官の不可逆的変化を細胞・組織学的にin vivo,in vitroの系で調べた. 1.生殖腺に関する研究. (1)出生後0〜10日から始めて5日間1または10IUのヒト絨毛性ゴナドトロピンをマウスに与えると成熟後も持続する無排卵の卵巣になる. (2)腹腔内潜伏のマウスの精巣は縮小するがLeydig細胞の数は変らない. しかし, Leydig細胞内の脂肪減少とミトコンドリアや滑面小胞体の増加が起る. (3)生後のマウスに種々の性ホルモンを与えると多卵濾胞が高率に出現する. (4)妊娠(15-18日)マウスにDESを与えると齢5-30日の仔に多卵濾胞が高率に生じる. 生直後にDESで処理されたマウスの多卵濾胞出現は齢30日における黄体形成率と反比例する. 2.生殖腺附属器官に関する研究. (1)妊娠(15-18日)マウスにDESを与えるとその30日齢の仔マウスの腟に腺疾患が生じる. この仔マウスに齢25日から5日間E_2を与えると腺疾患の発生は著増する. (2)生直後のマウスに雄性ホルモン(T)を与えると無排卵持続, 多卵濾胞, 腟上皮増殖が見られるが, 5α-reductaseやaromataseのインヒビターを与えても腟上皮の持続増殖は抑制されない. (3)除卵巣マウスの腟上皮細胞を培養した培地に1.8nMのE_2は腟上皮細胞の増殖を抑制し, サイトゾルのエストロジエン・レセプターを減少させる. 3.エストロジエン拮抗物質の作用. 拮抗物質の一つであるタモキシフエンを生直後のマウスに与えると齢150日で子宮発達不良, 子宮筋層の退縮, 子宮腺の未発達, 尿道下裂, 卵細胞退化等が起る. 更に恥骨の持続的軟骨化と恥骨連合の伸長が生じ, その結果膀胱や盲腸のヘルニアが多発する. 4.腫瘍発達の抑制. ヨードチロシンを静注されたマウスに乳腺や副腎皮質の腫瘍を移植すると腫瘍が退縮する.
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