研究概要 |
八丈島は伊豆七島でも珍しく表流水が見られる三原山火山をもつ. この表流水は地下水の湧出によって涵養されているが, 本研究では, その湧出機構を検討し, 地下水収支モデルを設定した. 研究成果の要点は次のとおりである. (1)八丈島の三原山は, その火山活動の時期の相違から大きく4つに区分される噴出物からなる. それらは下位から, 先三原山火山噴出物, 下部三原山累層, 中部三原山累層, 上部三原山累層である. (2)三原山の地表を覆う上部三原山累層や中部三原山累層中の降下火砕堆積物の滲透能は高く, 降水のほとんどは地下に滲透する. (3)三原山の地質構造は東・西・南・北それぞれ異り, 西側では, 三原山カルデラ形成後の噴出物(上部累層)が厚く堆積しているため, 地下水位は深く, 表流水は見られない. (4)不圧地下水の滞水層は主として上部三原山累層(北側・南側)と中部三原山累層(東側)中の溶岩や降下スコリア層である. (5)河川流量のほとんどは, その流域に存在する湧泉によって涵養されている. (6)渇水流量とその流域の地下水涵養量(降水量-蒸発量×蒸発散率)の比較を行うと, 南側の表流水は, 地下水涵養量の大半が流出しているとの結果になる. また, 北側・南側の河川流出量は, 地下水涵養量の半分以下が流出していることを示し, 直接地下水から海へ流出しているものも多いことを示している. (7)以上の結果をもとに, 地質調査の結果から得られた地質構造と地下水流動状況を比較すると, 両者はよい一致を示す.
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