糸魚川-静岡構造線沿いの活断層と地形、歴史上の被害地震についての記録の収集を行ない、次のような成果をあげた。 1.諏訪湖北東岸および南東岸には活断層が集中的に分布し、諏訪盆地活断層系を形成している。 2.諏訪盆地活断層系は、諏訪湖北東岸の上諏訪活断層群と、南西岸の諏訪湖南岸活断層群とからなる。 3.これらの活断層の多くは、いずれも湖側ブロックが相対的に落下するセンスをもっており、諏訪湖が断層運動に伴って落ちこんだグラーベンであるとする従来の考えを裏づけるものとなっている。 4.松本市北方の明科町〜池田町にかけての松本盆地東縁部に発達する小規模な山麓扇状地や段丘の調査によれば、中山山地南部の押野山北縁を北東-南西方向に走る"押野山断層"は山地西麓部の扇状地を切断・変移させている活断層である。 5.押野山断層を境にして、その北側の山地と南側山地とでは地形的な特徴が異なる。すなわち、北側山地では標高900〜1000mほどの定高性の顕著な古地形面が山地頂面としてよく保存されているのに対し、南側山地では標高およそ620〜700mまでの間に6面の古い地形面が識別され、その1部には旧河道を示す礫層がローム層におおわれて存在する。 一昨年より実施していた松本盆地中央部の重力探査の結果をまとめ、公表したが(萩原ほか、1986)、それによれば松本盆地東縁部に伏在する南北性の断層群は、いずれも東側地塊が西側地塊に押し上げるセンスの逆断層である可能性が強い。 歴史上の被害地震についての記録の収集・整理は現在も進行中であり、野外調査と合わせて今後も継続の予定。
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