研究概要 |
本州中部のフォッサマグナ地域には最近地質時代におけるプレート境界域の激しい地殻構造運動と変動を反映した降起、沈降現象により、礫を主とした粗粒堆積層が顕著に発達している。これらの地殻変動の影響を解明するためにも、粗粒堆積物が供給源(河口)から堆積地へ移送される過程を実証的に現地で確認する事が必要である。本研究では現在この様な粗粒堆積層が典型的に形成されつつある駿河トラフ最奥部の富士川河口沖ファンデルタを中心とした海洋地質学的調査研究と、海底におけるIn situな調査を実施するための潜水調査法の開発とその予備調査を行なった。その結果の概略は次の様である。 1.富士川河口を中心とし、東亜8-9km、南北3.5kmの調査地域内で電波測距法による精密な海底地形、地質の調査をした結果この地域には(1)、泥質の堆積物でおおわれ、顕著かつ大規模な地すべり地形の発達する屋根状の地域と(2)、含泥量の少ない粗粒堆積物の分布する尾根部分より約100m低い谷状の地域が交互にくり返し見られる。この谷の中にはトラフ方向の溝が多数有る。 2.河川による埋積面からトラフ斜面への変換点は水深10〜20mの所にある。この事は河川により運ばれた堆積物は谷状地域の中を容易に小規模な重力流堆積作用によりトラフ底方向へと滑り落ちる事を示している。尾根状地域の泥質な堆積物は地震等による,より大規模な重力流となるべき堆積物の貯蔵庫として機能している可能性がある。断層による海底地すべりも見られる。 3.潜水調査については研究地域、対象を選び、作業能率を考慮すれば、非常に有効な手法となり得る。ただし海底での測位、ナビゲーション、安全性の十分な確保等の諸点についてなお改良、検討が望まれる。 今後も本研究で示した様な粗粒堆積物の現場での調査研究を追求し、特に潜水調査の可能性、有効性を発揮すべく調査研究を実施したい。
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