研究概要 |
北陸地方新第三系の含貝類化石層すべてについて、その層位学的検討と貝類化石群の構成要素を明らかにすることに努め、本年度は中新統を中心に調査した。対象とした能登半島の東印内層,七尾層,金沢市及び医王山地域の砂子坂層,富山県八尾町及び大沢野町付近の黒瀬谷層,音川層などより多くの化石資料を採集し、室内での整形作業をへて同定した。これらの作業には大学院生から作業補助を得た。その結果200種を越える構成種を同定し、それらの時空分布が明確化できた。また同時に、含貝類化石層の微化石層序を検討し、珪藻化石帯との対応をつけ、これらが16〜14.5Maの年代に限定できることが明らかになった。この結果は従来の知見とかなり違い、中新世中期に大きな地層の欠除があることになる。そのため頭初予想していた貝類化石層序の連続的な追跡を北陸地域だけで確立することがむつかしい状況である。しかし、中期中新統の約150万年間について、貝類群の細かな消長が把握できる好条件の地域である。即ち、熱帯性群集から亜熱帯,暖温帯,温帯性への漸移的変遷が示唆される。これら貝類群集の古海洋気候的解釈は未解決の問題が残されているので、その質的評価を論理的に検討する必要がある。 暖流系・寒流系貝類群の構成要素の比較は、北海道築別地域を一例に検討を加え、暖流系から寒流系への移行過程が時間的にも地理的にも認められることが示唆されており、北陸地域で認められる時間的変化が本邦においてどの程度一般化できるのかを検討中である。これらの予察的結果は昭和62年1月31日の古生物学会シンポジウムで発表し、続いて論文化しつつある。 また、これらの研究の基礎的文献資料として、最新の分類学,古動物地理学及び堆積学関連の洋書を購入し、最新の知見を深めつつある。 以上の予察的結果を踏まえ、次年度は鮮新統の貝類化石群を含め、それらの質的評価を検討し全体を総括する。
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