研究概要 |
南部フォッサマグナに属する駿河湾北岸地域の新第三系は著しく褶曲し、断層によって地塊にわかれた複雑な地質構造を示す。そこで、この地域の地塊ごとの浮遊性有孔虫による生層序を検討し、これに基づき地質年代の決定をおこなった。 この地域の岩石は比較的時代が新しいにもかかわらず褶曲のため堅硬で、その中から有孔虫個体を分離することは非常に困難である。また、岩石が分解された場合でも、とり出された有孔虫個体の変形は著しく、同定の困難な場合がしばしば生ずる。このため、できるだけ多量の試料を採取処理し、できるだけ多くの浮遊性有孔虫個体を検出する工夫を試みた。硫酸ナトリウム,ナフサ,フッ酸,塩酸,ボロン等,種々の化学薬品に超音波浄器,真空定温乾燥器などを合せ使用し、または使い分けることによって、かなり効果のあがることが見出された。 断層によって、いくつかの地塊に分けられているこの地域では、野外調査によって各地塊ごとに下位から上位へ、代表的層序断面を選び多くの層位から試料採取を行い、浮遊性有孔虫を検出し、同定をおこなった。その結果、現在までに静岡層群はN.16からN.17(中新世後期,10Ma-5Ma)にわたること、和田島層群はN.16からN.17までの範囲の年代(中新世後期,10Ma-5Ma)ゃ小河内層群はN.18(鮮新世始期,5Ma),浜石岳層群はN.21(鮮新世後期,3Ma)に相当することが明らかとなった。これらの結果は、従来の見解を一部修正することになる。 上記駿河湾沿岸地域のほか、より北部にあたる身延周辺についても試料採取を行い浮遊性有孔虫の検出を進めている。
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