研究概要 |
北海道西部(日本海側)における13ルートの新第三系から約200個の試料を採集した。プレパラートを作成し、光学顕微鏡による群集解析をほぼ終了した。現在までのところ、1.栗山ルートの川端層と追分層の最下部はDenticulopsis praedimorpha帯、追分層はDenticulopsis dimorpha帯に;小平ルートの古丹別層はDenticulopsis hyalina帯とD.praedimorpha帯、大段層はDenticulopsis kamtschatica帯に;港町ルートの古丹別層はD.hyalina帯に;北風連別川ルートの増幌層はD.hyalina帯、稚内層はD.dimorpha帯に;16線川右股沢の増幌層はD.hyalina帯、声問層はD.kamtschatica帯にそれぞれ属することが確認された。その結果、(1)小平ルートの古丹別層ではDenticulopsis nicobarico帯,栗山ルートの追分層ではcoscinodiscus yabei帯が欠如している。この2帯はいずれも温暖性珪藻種D.nicobarica,C.yabeiの部分帯であるので、中-高緯度の北海道では温暖性種の産出頻度の減少と産出期間の短縮が起こっていると考えられる。(2)これとは反対に、寒冷性珪藻種D.praedimorpha,D.dimorpha,D.kamtschaticaなどの産出頻度が増加し、産出期間の延長する傾向が認められる。このように、珪藻基準面の一部は明らかに時間面を斜交しており、北太平洋新第三紀における珪藻地理区と珪藻層序を検討する必要が確認された。そのためには微化石時間以外の時間面を把握することが不可欠である。2.北風連別川と16線川右股沢ルートでは珪質堆積岩の岩層序からみて連続した地質断面の存在が推定されていたが、北太平洋域における珪質堆積物の形成開始を示すD.praedimarpha帯の欠如していることが判明した。この原因を多角的に検討する必要が生じた。3.加茂川,五勝手川,古櫃川,晩生内などのルートからの試料では珪藻殻の溶解が認められ、群集解析を行えなかった。堆積盆地における堆積機構とシリカの続成過程を知ることが大事である。
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