研究概要 |
阿武隈山地で最も高変成度の変成岩類と白亜紀塙深成岩体が分布する. 福島県塙町・鮫川村から茨城県里美村・高荻市にかけての東西約15km, 南北約15kmの地域について, 詳細な地質調査を行い, 地質図を作成し, 多数の岩石資料を採取した. 塙岩体について71個の岩石の鉱物組成, 16個の岩石の主成分化学組成, 11個の岩石中の造岩鉱物の化学組成を明らかにした. また, 約150個の変成岩類について鉱物組合せを明らかにした. 塙岩体は貫入の順に古い方から, 細粒石英閃緑岩・トーナル岩, 片状トーナル岩・花崗閃緑岩, 岩体の主体をなす花崗閃緑岩類に大別できる. 花崗閃緑岩類は斑状カリウム長石・石英含有岩相, 大型くさび石含有岩相, ミロナイト質岩相, 細粒等粒状岩相に細分できる. 貫入の時期が新しくなるに従い, 全体としてカリウム長石と石英の量が増加し, 苦鉄質鉱物の量が減少する. 岩石の主成分化学組成はHarker図でK_2Oがかなりばらつく以外, 日本の花崗岩類の平均化学組成の変化傾向とほぼ一致している. 岩体の主体をなす花崗閃緑岩類はSio_2が67〜73%であり, かなり珪長質で, 均質な化学組成を示す. それらに含有される黒雲母のMg/(Mg+Fe)比と斜長石のAn組成は全体として, 岩体の南西側に向って減少する. 泥質・砂質変成岩中でのざくろ石ないし菫青石とカリウム長石の共存の有無, 塩基性岩中の特徴的鉱物の種類などから判断すると, 変成度は西側の塙岩体に向って全体として減少する. このことから, 塙岩体の貫入は高変成岩類をもたらした熱源としてそれほど重要ではなく, 高変成作用の温度勾配は東側に位置する田人岩体の接触変成作用に規定されたものと推定される. 以上の研究の他に, 郡山市東方の宇津峰周辺の地域についておおまかな地質調査を行い, 多数の深成岩類と変成岩類を採取した. それらについては今後種々のデータを明らかにし, 同地域における深成岩類と変成岩類との成因的関係を解明する予定である.
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