研究概要 |
本年度は, ガス混合装置を組み入れた放電流体系のシステムを試作し, 地球の初期状態のシミュレーション実験を行う予定であったが, 市販のガス混合装置は, ガスを切り替えた時, 内部にガスが残留する現象が起こる為, 自家製の装置を自主製作をしたためにかなりの時間を費やすことになった. 初期実験として、蒸留水中に電極の鉄棒を上下にセットして、その間に炭素棒の中心に円筒状の穴を開け、その中にシリカ粉末を充填して、変圧器および放電溶接装置により電圧を架けて、放電(実際はショ-ト)させた。回収された試料は微量であるため、正確な同定はなされていないが、70ボルトまでの電圧変化に対しては試料の変化は見られない。しかしながら鉄棒と炭素棒との接触部の炭素棒の底面には極微小金属の熔解球の散在が認められ、相当の高温(鉄の融点1535°Cと沸点2730°C)まで上昇していることが判定される。金属小球を回転対陰極の強力X線で検討したところ、cohenite FeC様のものが同定された。coheniteは隕石中に存在し、地殻中には自然鉄として産出する。原始地球は、大気にはDCO_2が存在し、地表には海が形成されていたが、現在の地球ほど分化がまだ進んでいなかったと考えられ、地表には鉄元素も豊富に存在していたにちがいない。したがって、大気と地表との間で放電が激しく起こり、地表の鉄及び炭素に富んだ岩石は高温の衝撃波を受けたことが予想される。このため、現在の地球には殆ど産出しないcoheniteは、創生期の地球では豊富に存在していたことが期待される。放電が起こる地表の岩石種に応じて、発生する鉱物種が異なることは、鉱物の生成原理を構築する上で、新たなる問題を提起したことになる。 今後は, 水溶液, ガス中での各種の放電実験を繰り返し, 放電場で様々な固相を反応させて, 地球の初期状態を復元して, 地殻の進化, 生命の起源, 鉱物生成原理等の解明を究察することになる.
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