研究概要 |
三波川帯の溶岩が形成された堆積盆を考察する上でtectonostratigraphic terrancの解析が重要であることが最近のニュージーランドの変成帯の研究から示唆される. この点をふまえ三波川帯のテレン解析を行うと, 小歩〓テレン(砂質岩の卓越するテレン), 三縄テレン(苦鉄質片岩が卓越し, 蛇紋岩や外来岩塊をふくむテレン), 大生院テレン(砂質岩の卓越するテレン)などに分類できる. この分類は単に岩相組合せの違いを説明するだけではなく, 変成作用によるウェルディングのための不明になっているテレンの境界が大構造の不連続面として追求できる可能性をも示す. 横臥褶曲等の構造の研究段階の成果をもよく説明する. シース褶曲の発達もこのテレン解析によるテレン境界との関係から見直すことが重要である. 今後はこの解析の上に立って, 泥質片岩の分析を進める必要がある. 今後室内で分析される手法は, 微量元素の分析・REE分析, Rb-Sr分析(同位体比)などであるが, これらの分析に必要な試料作り, 検量線作り, ピーク認定方法の訓練などが今年度行なわれた. またCHNコーダーによる泥質片岩の分析も行なわれた. また炭質物のEPMA分析から, 2つの産状の異なる炭質物があることが明らかとなった. 一つは片理面にそって黄鉄鉱と密接に伴なって産するもので, これは薄層を形成しているためEPMAによる半定量分析は現在のところ不可能である. EDXを行いた分析などが今後試みられなければならない. もう一つは不定形塊状の炭質物で, かなりHを含むことが予想される低C含有の炭質物である. これらの炭質物の成因についてはまだ不明であるが, 泥質片岩の起源について, 新たに得られた情報として尊重してゆきたい. その他, 全岩のC/N比を泥質片岩について求め, 遠洋性起源であろうとの見通しを得た. ただし局所的に変化するC/N比については, その理由はわかっていない.
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