研究概要 |
本年度の研究によって得られた最も重要な成果は、四国中央部三波川帯の低変成度地域、緑泥石帯、に広くシース褶曲が存在することを確認したことである。三波川帯におけるシース褶曲の存在(とその可能性)はFAURE(1983)によって初めて明らかにされ、FAURE(1985)によって、三波川帯全体の問題として一般化された。しかし、FAURE(1983、1985)は緑泥石帯のかなりの部分ではシース褶曲を確認できなかったCFAURE、1985の図を参照)。報告者によって見出されたシース褶曲は重複変形を受けており、また後期の強い変形のため、シースの形態はかなりの程度破壊されている。しかし、稀に、eye-ball foldも見出された。四国中部で見出されたシース褶曲の伸びの方向は大局的にNW-SEである。このシース褶曲は原ほか(1988)の沢ケ内ユニットに見出だされる。冬の〓ナツプに入ると、FAURE(1985)の指摘するようなE-W性のcluctik shearが卓越する。つまり、ナップ下底で沢ケ内ユニットの転換があったものと思われる。 このシース褶曲の確認は泥質片岩の起源について次のような問題を投げかける。シース褶曲はQUINQUIS et al,(1978)の報告以来、しばしばより珪質部分に見出されてきている。これはshearに対する物質の対応が珪質部で特徴があり、シースを作り易いからである。シース褶曲を作るような変形を受けた時、泥質片岩にすでに珪長質の薄層がなければならない。つまり、泥質片岩ははチャートミナイトである。CやNの含有量から、泥質片岩は大陸泥物質の届かない遠洋域に堆積したものを原究とすると考えられる。しかし、玖珂層群では剪町帯に沿って、CやNが濃集しているので、構造運動とC・Nの濃集の関係についてはさらに検討されねばならない。
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