研究概要 |
1.岩石の1気圧溶融実験については、前年に継続して斜長石-マグマ間のMg-Fe分配の酸素フュガシティ依存性を海嶺玄武岩および伊豆大島玄武岩について求めた。前者は1200°C、後者は1130°Cで行ったが、△FMQに対して分配係数をとると2種の玄武岩でほぼ一致し、この分配関係がよい酸素フュガシティ計として使えることを示している。この酸素フュガシティ計は、斑晶晶出時のマグマ溜り内での酸化状態を知る手がかりと成り、斜長石斑晶が一般的であることもあいまって、適用範囲が広いと考えられる。(Proceedings of ODP,111,Part B,in press,日本火山学会1988/7;日本地球化学会1988/10) 2.火山岩の石基組織の生成条件について、予備的な1気圧溶融冷却実験をおこなった。その結果、斜長石の単位面積当りの見かけの結晶核密度は冷却速度よりも初期溶融の過冷却度に強く依在することが確認された。(鹿児島国際火山会議1988/7、日本火山学会1988/11)。 3.瀬戸内および能登半島、舳倉島、七ッ島の高マグネシア安山岩類について、地球内部研究センターにおいてSr,Ndの同位体比を求めた。五色台産のものは(^<87>Sr/^<86>Sr)比が0045-0066、ε Ndが+2--4の範囲で、マントルアレイよりも若干Sr同位体比が高い傾向がある。このような組成変化は海洋堆積物の混合同化で説明され、微量元素組成と矛盾しない 能登半島についてはやはりマントルアレイよりも放射性Srが富む傾向がみとめられる 4.北西九州では火山フロントより背弧側で、多量の玄武岩に伴われて古銅輝石安山岩、カンラン石安山岩等が産する。今回は高知大学の厚意でXRF分析値を得ることができた。これらの高マグネシア安山岩類も他地域のものと同様、高いNi/Mg、Rb/Ba比を示した。 5.全体のとりまとめをおこない報告書を作成した。
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