1.香川県五色台産高マグネシア安山岩類について、地質学的、鉱物学的、地球化学的なデータをほぼ揃えることができた。その給源物質の性質、可能な分化過程についての像がほぼ明らかになった。五色台の高マグネシア安山岩はほぼマントルかんらん岩の部分溶融で生じた初生マグマの特徴を有するが、微量元素組成、Sr・Nd同位体比は沈み込み堆積物の関与を示唆する。 2.ボニナイトの微量元素組成、特にLIL元素組成の特徴を明らかにした。変質の影響を検討するために、酸処理した試料についても放射化分析をおこなった。全体の組成トレンドは斑晶鉱物の結晶分化で説明可能である。また、初生マグマの微量元素組成は、REE等に著しく乏しく、特にRb、Cs等のアルカリ元素濃度が高く、Rb/Ba比の大きいことが示された。 3.能登半島および舳倉島・七ッ島の第三紀古銅輝石安山岩等の岩石学的、および地球化学的研究をおこなった。これらの高マグネシア安山岩類は、テクトニックな条件、マグマの温度、微量元素組成等から、初生安山岩マグマに由来するものとは考え難く、未分化な玄武岩質マグマとデイサイト質または流紋岩質マグマの混合で生じた可能性が考えられる。 4.北西九州の多量の玄武岩に伴われて産する古銅輝石安山岩等は、他地域の高マグネシア安山岩類と同様、高いNi/Mg、Cr/Mg、Rb/Ba比を示した。 5.火山岩の、気圧溶融実験をおこない、予備的な実験で、斜長石ーマグマ間のMg-Fe分配が酸素フュガシティ計として有効であることを示した。この酸素フュガシティ計は、斜長石斑晶が一般的であること、変質の影響を受けにくいことから、適用範囲が広いと考えられる。 6.火山岩石基組織について、噴火過程をシミュレートする溶融冷却実験を行った結果、斜長石の結晶核密度は冷却速度よりも初期溶融の過冷却度に強く依存することが確認された。
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