研究概要 |
本研究では, 木星型惑星と衛星の内部構造を明らかにすることを目的として, H_2OやNH_3を含む系の相平衡の実験を行った. 実験方法は, ダイヤモンドアンビル高圧装置を導入し, 相転移や融解の様子をその場観察し, 高圧下でのX線回折によって相の同定を行うものである. ダイヤモンドアンビルによる発生圧力を測定するために, ルビー螢光法による圧力検出システムを自作した. 以上の方法によって, H_2O-NH_3の二成分系の相関係の決定を常温のもとで約10GPaの圧力にわたって行った. 高圧下での相の同定には, 東大物性研の協力をあおぎ, 回転対陰極強力X線を線源とし, SSD及びフィルム法の2つの方法を併用した. 実験によって, 宇宙存在度組成(NH_314wt%)の約295Kでのリキダスは, 約1.2GPaであり, リキダス相は氷の高圧相ICEVI, そしてリリダスは約2.0GPaであることが明らかになった. 高圧下でのX線回折の結果, NH_3-26.8wt%の組成においては, 圧力約2GPaにおいて氷VI相からVII相への相転移が確認されたが, これと共存するアンモニア含有相の同定は, 回折線の数が少ないためにできなかった. しかしながら, X線回折及び偏光顕微鏡観察によると, アンモニア含有相には, 4GPa以下で安定なものと, それ以上で安定なものの2種類が存在するようである. なお高温での実験を行うために, 200°C以上の発生可能な, 外熱式加熱・測音装置を試作した. これを用いての高温での実験は, 今後行うつもりである. 以上の実験結果を用いると, 現在の木星型惑星の衛星の内部の温度分布のもとでは, 宇宙存在度組成において, 氷の多型と部分溶融液としてのアンモニア溶液が共存する. このアンモニア水溶液は共有する氷よりも軽く生成後分離して上昇し, 天体表面から宇宙空間に消散し安い. この過程の長期に及ぶ継続によって, 現在の天体では, NH3(CH4など)の成分が除かれH2Oが主成分となっていると思われる.
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