研究概要 |
代表的硫化鉱物の一つである閃亜鉛鉱を選びその中で鉄およびコバルトの拡散についてラジオトレーナー法を用いて実験を行った。 実験方法:荒沢鉱山産閃亜鉛鉱結晶と5×5×2【mm^3】にカフトし、研磨した表面にに放射性元素を含む塩化物水溶液を塗布し加熱拡散実験を行った。これらの試料を樹脂中に埋め込み、サンプル表面を研磨紙で削りとりその削りクズに相当する厚さを計りとった。厚さは一回につき平均約5μmでありその誤差は約1μmである。削った粉末から出るベータ線及びガンマ線放射能を測定し拡散距離との関係から拡散速度を求めた。 結果:これまでの実験結果から次のような結論が得られる。1.加熱により閃亜鉛鉱結晶表面からの蒸発がおこりトレーサーも移動する。2.本実験で求められたβ線,γ線の拡散プロフィルから計算される拡散速度はほぼ同一のD値をもつ。3.閃亜鉛鉱結晶面(110)に垂直な方向及び平行方向の各D値はほぼ等しい。4.鉄-59の拡散速度は800゜,700゜,600℃で各々2.0×【10^(-11)】,1.5×【10^(-12)】,1.7×【10^(-13)】【cm^2】/Sであり、Cobalt-60のそれは各々3.2×【10^(-11)】,3.1×【10^(-12)】,6.6×【10^(-13)】【cm^2】/Sである。この結果からCobalt-60の方が鉄-59よりやや拡散速度が速いことが判明した。5.鉄-59の拡散は結晶がおかれている硫黄分圧に依存し、その分圧が低くなるにつれて鉄トレーサー拡散速度が増加する。6.鉄,コバルトの拡散についてアレニウスの関係を求めた結果その値は鉄-亜鉛相互拡散によって求めた値とほぼ等しい活性化エネルギーをもつ。 以上のような結果がこれまでの実験で得られた。これらの他に次年度ではニッケル,マンガンの拡散速度を求めた閃亜鉛鉱中の元素の拡散と元素のイオン半径との関係をもとめ、拡散の機構を解明してゆく。
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