本研究は、固液界面におけるレーザー光の異常散乱現象とX線回折トポグラフの同時観察を行うことにより、光の異常散乱の原因を明かにするとともに融液成長時に結晶中に過剰に取込まれる点欠陥の挙動を明かにしようとするものである。 上記の目的を達成するために、レーザー光散乱とX線回折の同時観察を行う装置を設計、製作した。装置の主要な部分は固液界面の成長速度を0.1〜10μm/sの範囲で制御するための精密な移動装置および温度制御装置である。いずれも本研究のために特別に設計したものであり、十分な性能を有していることを確認した。人工育成の氷単結晶を種子結晶として、成長中の固液界面の観察を行った。成長中に転位が結晶中に取込まれ 速度が大きいほどその密度が大きいことおよび導入される転位のバーガース・ベクトルが〔00001〕であることを確認した。また、成長速度が大きい時に界面でレーザー光の散乱が生ずることも確認した。以上のように、本研究の目的の一部は達成された。しかし、レーザー光の散乱と転位の発生の相関を確認するには至っていない。使用した種子結晶には既にかなりと数の転位が含まれており、点欠陥の析出過程が既存の転位既存在に隠れて観察できなかったことが、その原因である。種子結晶の質の向上をはかることによって解決できると考えている。
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