研究概要 |
本研究は, 分子の大きさと電荷移動の関連を理論的に明らかにし, コヒーレンス長の短い結晶にも適用できる粉末法の構築および静電場誘起光第2高調波法の改良など, 実験による有機非線形光学材料の探索法を確立すると共に, 多様な有機物質の2次の非線形光学定数および超分極率を測定し, 巨大な非線形光学応答の起源の解明, デバイス化にとって有効な有機材料の探索さらにはその結晶育成の可能性を検討することを目的として行われた. 具体的な研究内容は 1.静電場誘起光第2高調波法の改良:従来法と比べて溶液セル構成が簡便かつセル・ガラスの3次の非線形性に起因する光第2高調波の影響を除去できる方式を開発し, それに伴って必要な理論式の導出を行った. 本方法を用いて様々な有機分子の2次超分極率を測定した. 従来法によるP-NA, MNAの測定結果と比べて本方法の有効性を確認し, 未知のMBANP, PNPDANの測定を行い, 分子軌道法による理論計算と良い一致を見た. 2.粉末法の有効性に対する疑問の呈示:膨大な数, 種類の有機結晶の2次の非線形性に対する性能評価に用いられてきた粉末法が実は, デバイス化に有効な有機材料を見出す上で全く役に立たないことを指摘した. ただ, 粉末法に代わる簡便な性能評価法の開発あるいは粉末法の改良は今後の課題として残された. 3.有機非線形光学材料探索手法の確立:2次超分極率がMNA並みで薄片結晶が得られる材料については, 屈折率測定とメーカー・クリンジ法を組み合わせた方法あるいは良い分子配向の結晶を見出すためのX線構造解析が, その性能指数評価に有用であるとの結論を得た.
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