導電性酸化物Ba【Pb_(イ-x)】【Bi_x】【O_3】に対して、光をプローブとして様々な光学応答の観測を行い、高い臨界温度Tc【-!〜】12K及びx>0.35の半導体相の成因を解明することが本研究の目的である。そのために上記物質の金属・超伝導体相、半導体相それぞれの組成をもった単結晶試料の作製に取り組んだ。フラックス法を用いることにより物性測定にたえる充分な質及びサイズの単結晶とスパッタリング法により薄膜試料の作製に成功した。これらの試料に対して光学反射、光学吸収スペクトル、光音響効果、更にレーザー光照射励起下での光伝導、ラマン効果の実験を行った。その結果、特に半導体相試料の光応答、光励起効果が特徴的かつ顕著な振舞を示すことがわかった。通常の半導体の場合と異って、半導体エネルギーギャップを介したバンド間遷移の吸収がかなり鋭いスペクトルを示し、その痕跡が金属相においても観測される。しかも、このバンド間遷移の吸収と、ある特定の酵素原子の格子振動モードとが共鳴して、ラマン散乱スペクトルに高調波を発生させていることが判明した。この事実は、半導体相のエネルギーギャップ生成の起源が、上記の酸素の固有振動に対応する格子の静的変形によるものであることの直接的な検証となっている。すなわち、半導体相の成因は電荷密度波の発生にあると結論できる。光学反射・吸収スペクトルによって決定された半導体相のギャップエネルギーはx=1のBaBi【O_3】で最大であり、Bi組成xの減少にともない小さくなってゆく。しかし金属相においても、その痕跡が残っているという事実は、上記の格子振動と電子系との結合が金属相においても充分強く保持されており、Ba【Pb_(1-x)】【Bi_x】【O_3】における超伝導がこのような光学型フォノンとの結合により引き起されていることを強く示唆するものである。本系が金属として低電子濃度であることは光学型フォノンとの強い結合に有利に働いていると推定される。
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