1.減圧気相成長 亜鉛とセレンの蒸気を10^<-6>〜10^<-1>Torrの水素雰囲気中に供給する減圧気相成長法でGaAs基板上にZnSe単結晶薄膜をエピタキシアル成長させた。成長直前に基板表面を高周波水素プラズマで処理することで成長の再現性が向上した。成長中のSeとZnの供給比(VI/II比)を精密制御することにより、低温で自由励起子発光が支配的な高純度アンドープZnSeを得た。 2.不純物ドーピングによる特性の制御 結晶成長時の圧力が0.1Torrの場合、アンドープ結晶は高抵抗であったが、ドナーとしてInをドープすることがキャリヤ密度を10^<16>〜10^<18>cm^<-3>の範囲で制御できた。成長圧力が10^<-4>Torrの場合にはアンドープ結晶でも数Ω・cmの低抵抗率を示し、キャリヤ補償準位の発生の程度が成長圧力に依存することがわかった。室温でのキャリヤ密度が5×10^<15>cm^<-3>の試料が低温で8000cm^2/v・sec以上の高移動度を示し、残留不純物の少ない高純度結晶であることが裏付けられた。成長系内にNH_3ガスを導入すると、浅いアクセプタ準位に束縛された励起子の発光が2.793eVに、ドナーアクセプタペア発光が2.70eVに現れ、NH_3濃度とともに強度が増大した。また、この発光はVI/II比が増加するにつれて減少し、Se位置を置換したNアクセプタによるものであることが裏付けられた。 3.GaAsヘテロ基板の影響 ZnSeとGaAsの格子定数および熱膨張系数の不整合に起因してZnSeエピタキシアル膜中に発生する格子歪を温度、膜厚、成長温度と関連づけて測定・解析した。また、基板の転位密度が成長層の品質に無視できない影響をもつことが明らかになった。格子不整合や基板の転位密度は成長層の残留不純物にも大きな影響を与える。
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