研究概要 |
1.ネマチック液晶の自由表面,2.ネマチック相と等方相との界面(NI界面),3.平滑な固体基板とネマチック液晶との界面,のそれぞれにつき、統一的な分子モデルを用いて、界面張力を分子配向の関数として、統計力学的に計算し、分子論的な表式を得た。とくに、従来無視されて来た分子間および分子と界面との間の排除体積効果が重要な役割を果していること、すなわち分子配向に関しては1の場合には界面に垂直,2と3の場合は界面に平行に分子を配向させるように働くことを明らかにした。また、引力相互作用に基づく分子間ポテンシャルの働きは、分子構造に依存して異るが、特定の分子は1および2の界面では同様な配向をしようとする傾向があることも分った。これらの理論的計算結果に基づき、各種界面での実験結果を解析し、1の場合には実験的に観測されるすべてのタイプの分子配向が説明されるほか、MBBAやEBBA分子で観測されている温度による垂直-斜め配向転移も理論的に良く説明できた。理論的に示された、ネマチック・等方相転移温度で表面張力が不連続に変化するという結果は、実験値と一致する傾向であった。2の場合には、同一の物質でもネマチック相自由表面と、NI界面とで異る分子配向をするという実験事実が、理論的には互いに矛盾なく説明されることが示された。また、1,2両界面での分子配向を調べることにより、特定分子の分子間相互作用ポテンシャルの形が大よそ推定し得る可能性も示された。3の固体表面に関しては、分子間および分子と界面との間の相互作用が複雑にからみ合い、また界面の微細な構造に敏感に依存するので、引き続き綿密な考察を行っている。
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