研究概要 |
通電加熱法やスパッタアニール法によりβ-SiCの清浄表面を作り、FeおよびTiを蒸着し、LEED,AES,XPSで反応の初期過程を調べた。β-SiCはSi(100)上にCVD法により成長させたもので(京都大学 松波先生提供)、800℃以下の加熱ではas-grown試料も含めてLEED像はサテライトを伴なった(1×1)構造である。これらの試料表面からのAES・SiLVVやXPS・Si2pはわずかに酸化した構造を示すが、炭素と酸素の結合は認められず、酸素は選択的にSiと結合するようである。〜1000℃の加熱で酸素は減少し(OKLL/SiLVV〜1/23)、SiLVV/CKLL比が増加するとともに、SiLVVスペクトルの最大および最小ピーク位置は高運動エネルギー側にシフトする。それにともなってLEED像も(2×1)構造に変化する。〜1050℃10分の加熱で、酸素はさらに減少し(OKLL/SiLVV=1/125)、C(4×2)構造が出現する。この構造は汚れに対して敏感で(1×1)構造に戻り易く、また〜1100℃の加熱でC(2×2)構造に変化する。室温でTiを蒸着すればモノレーヤ以下でもTiとCの反応がみられる。さらに基板を680℃に加熱しTiを〜50【A!°】蒸着すれば、TiおよびCのAESスペクトルはほぼ完全なTiCスペクトルとなる。一方、結合の手の切れたSiは表面に拡散し元素状Siとなる。Fe/SiCの予備的実験の結果では、シリサイド,カーバイトともに形成が認められない。 炭素の微細な化学状態を同定するために、β-SiCとともにダイヤモンド,グラファイト,ダイヤモンド状炭素膜のC-KLLスペクトルをXPSとAESで詳細に調べている。その結果、AESではいずれの試料も電子ビームによるダメージが無視できないことが明らかとなった。 今後は、Fe,Ti,Pd,Ni,Al等の金属あるいは各種絶縁膜とβ-SiCの界面反応を更に詳しくLEED,AES,ELS,XPSで明らかにし、電気的特性との相関を明らかにする予定である。
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