研究概要 |
極く最近開発されたβ-SiC単結晶をデバイスへ応用する場合, その表面物性や金属との反応性に関する基礎データの集積が不可欠である. 電子分光による評価を行うにあたり, まず種々の化学状態の炭素(β-SiC, ダイヤモンド, グラファイト, ダイヤモンド状炭素膜)を光電子分光法(XPS)およびオージェ電子分光法(AES)で詳細に調べ測定によるダメージも含め評価法を確立した. β-SiC表面の清浄化は〜10^<-10>torrの超高真空下の通電加熱によって行ない, 清浄化によりLEED像は, ややディフューズな4×1から明瞭な2×2構造に変化する. 清浄β-SiC表面のSiLVVおよびCKLLスペクトルは, 両者とも主ピークから17eVと24eVに微細構造を示し, それぞれ表面およびバルクプラズモンによる損失構造であることをはじめて明らかにした. β-SiCにスパッタや金属〓着を行えばその後のアニールによってLEED像はC2×2や2×1構造を示し, オージェスペクトルにもSi-C結合に加えC-CやSi-Si結合も含まれることが明らかとなり元のよく定義された清浄表面への回復が困難であることが示された. 室温でTiはβ-SiCと容易に反応しTiCが生成する. 一方, 室温で鉄を〓着すれば, 僅かではあるが鉄シリサイドおよび鉄カーバイドが生成することもはじめて明らかにした. Fe(数百〓)/β-SiCを250°Cで加熱すれば炭素のみが表面に鉄カーバイドの形で現われ, 540°Cの加熱では, 単体Siが鉄カーバイドの2倍の強度で急増する. 膜内部では両者とも急減することから粒界拡散による表面偏析であることが明らかとなった. 深さ方向分析の結果膜内部では, Si:C:Feの比はおよそ1:2.5:25で, 主生成物はFeSi_2とFe_3Cであり, 界面では単体Siのパイルアップが顕著であることが明らかとなった. 今後Al, Ni, Pd, W等の金属のメタライゼーションも試み, 電気的特性との相関を調べる計画である.
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