研究概要 |
表面上に不規則に配列する吸着原子系に対して、原子間の相関を考慮できるあるクラスター・コヒーレント・ポテンシャル近似の方法(H・Miwa,197)を用いることにより、状態密度を求める一連の表式を導いた。この表式を用いて数値計算を行った結果、状態密度が総和則を満たさないという困難に出会った。二元合金に対するある種のクラスター近似においては、2種の原子のエネルギー差が大きい時には、グリーン関数の解析性が破れることが以前に指摘されており、上記の困難は、この問題と関係していることが分った。これを解決するためにButler(197)の提案した方法を採用し、定式化を再度行った。上記の困難の本質とその解決法を、今問題にしている原子一空孔系の場合に検討し、この新しい方法に基づき計算した結果、当初の予想通り、被覆度θ〜50%以上から吸着原子系の状密度が急激に拡がり、基盤からの電子の逆移動が顕著に起きることを明らかにした。またこの事実と関連して、仕事関数が被覆度が増加するにつれて減少しθ〜60%で極小を示し、それ以後、逆に増加するという実験事実を、半定量的に説明することができた。この結果は、61年9月の物理学会(西の宮,関西学院大学),表面・界面分科において報告した。たゞし、現在用いている方法は、電子の遷移を最近接原子間のみに限定しているため、あるエネルギー領域では良い近似とは云えないことが分った。この点を改良するため、コヒーレントポテンシャルをマトリクスとして抜う Cell-CPAの方法を適用し、改めて現在計算中である。
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