研究概要 |
風洞模型はNASAが中速航空機向けに開発した層流翼(40cm弦長)を基本形とし、その後縁部に手を加えたものである。すなわち翼上面に接する、断面が半月形で半径7.5%のコアンダ面を設けた。このコアンダ面は円の中心まわりに回転して、出し入れ可能な形態とした。完全に引き込むと原翼に近い抵抗の小さい形となり、最大限に引き出すと、ジェットの向きが離陸時に有効に揚力を発生する方向となる。コアンダ面の最大弦長は10.5%である。実験はこの二形態についてなされた。 ジェット用加圧空気は、新規購入のブロワーによって発生させ、同じく流量計で流量をチェックし、同じく圧力計で模型プリナム室の圧力を測定した。模型表面の圧力積分から揚力とピッチングモーメントを、後流総圧の積分から抵抗を求めた。圧力データはパーソナルコンピューターで処理した。 模型迎角を4゜間隔に6ケース,ジェット強さをCuの最大値0.2までの間8ケース,フラップ付き,無し,の各場合について総計97ケースの測定を行った。風速は10m/s、流れのレイノルズ数は2.7×【10^5】.結果は以下の通りである。最大揚力係数はα=6゜,Cμ=0.2で4.6、この値は高揚力装置としては決して高いとは言えないが、巡航状態の形状を重視したことによるものである。巡航形態であっても5%弦長のコアンダ面があり、Cμ=0.2: α=6゜,10゜で各々2,7,3.2の揚力係数を得た。最小抗力係数は0.016、Re数の大きさを考慮すると妥当な値である。 数値計算はナヴィア・ストークス方程式の直接解法を後縁の丸い翼に適用し、Re=1.7×【10^5】,Cμ=0.04の場合にジェットの効果を確認しており、圧力分布を測定値と比較してかなり良い一致を得ている。
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