航空機の操縦に携わるパイロットは、一般に多変数の情報処理と制御を行っているので、操縦性の正しい評価やパイロット・レイティングの的確な解釈のためには、多変数系におけるパイロットの操縦特性を把握することが肝要である。パイロットが採用する閉回路構造が明確な場合は、種々の方法により操縦特性を解析することが比較的容易にできるが、そうでない場合についての従来からのデータの蓄積は非常に少ない。そこで、本研究は縦方向、横方向の飛行径路制御を例に採り、パイロットが採用する閉回路構造と未知操縦特性の同定並びに従来仮定されている閉回路構造や操縦特性の証明を行うことを目的とした。縦の飛行径路制御については、閉回路構造が2種類考えられ、パイロットが実際に採用する閉回路構造を弁別し、またその閉回路におけるパイロット操縦特性を求める方法を、先に研究代表者等は提案した。人間パイロットを用いたシミュレータ試験及び飛行試験データの解析の結果、閉回路構造の弁別が常に明確とは限らないことが判明した。その理由の1つとして、パイロットが採用する可能性がある閉回路構造が2つ考えられる時、パイロットは必ずしもその中の1つに固執した操縦を行うのではなく.時分割的に両者を併用している可能性があることが挙げられる。そこで、本年度はパイロットを用いたシミュレーション試験の他に、この可能性を調べるためのディジタル計算機による計算機シミュレーションを行い、そのデータを解析して、操縦が時分割的である場合は、先に提案した方法ではどちらか1つの構造が選択されることはないことを示した。このことは、先に行ったシミュレータ試験データ解析の結果と併せて論文にまとめられ、現在投稿中である。これらのことを考慮に入れて、従来より得られているデータの再検討を行うと共に、更にシミュレータ試験を継続したい。
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