密閉二相熱サイフォンは、超熱伝導体として知られるヒートパイプの中でも特に高熱負荷に対応できる伝熱素子として、近年、その効果が認識されるようになり、数多くの技術分野で積極的に利用されるようになった。しかるに最近になって、不安定作動による伝熱特性の変動と作動流体の特異な挙動によるコンテナーの内壁に生じるエロージョンによるものと考えられる熱サイフォンの寿命問題が、早急に解決されねばならない課題となってきた。 本研究によって、まず熱サイフォン内に生じる諸々の不安定現象の種類と特徴、ならびに、発生条件を数多くの実験によって検索することができた。同時にそれらの発生メカニズムを明らかにしたとともに、それをモデル化した解析によって、蒸発部、凝縮部、蒸気の時間的温度変化と熱伝達率の変動を求めることができた。特に不安定作動の初期に熱伝達率が大きく変化することが明らかになった。また、内部に封入する作動流体の種類の影響に関する実験的検討から、特に水の場合の中規模と大規模の不安定作動が熱サイフォンの寿命と密接に関係することを確認した。すなわち、不安定作動の主因である核沸騰により生じる蒸気泡の急激な膨張が大量の液体を押し上げ、これに続く過程での液体落下が小気泡を崩壊させ、この際生じるマイクロジェットがコンテナー内壁を極所的に強打し、エロージョンの発生を招くことが明らかになった。さらに本研究では、エロージョン破損の防止策として、積極的に作動流体の流動を制御する方法と、消極的ではあるがエロージョンに対処する方法を提案し、それらの長所と短所についても検討を行っている。 本研究の後半のエロージョン防止策に関しては、今後なお一層の継続した実践的研究が必要であり、この補追によって熱サイフォンの利用分野がなお一層拡大することから、本研究を今後も継続する予定である。
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