研究概要 |
プラズマディプラプション等の影響を調べるために、直経0.2mm深さ0.2mmの人工表面欠陥を有する316ステンレス鋼(パイプ状試験片)を用いて、650°Cならびに室温で低サイクル疲労試験を行った。 1.繰返し変形特性と転位構造変化の関係 (1)3種類の方法で求めた繰返し応力ひずみ曲線は塑性ひずみ幅Δεp>0.2%の範囲ではほぼ一致する。(2)疲労変形中のセル組織の面積率の変化は、室温と高温とでは異なっている。高温ではその形成時期が早く、またその割合も大きい。(3)疲労途中および飽和時のセル組織の大きさ1cと転位密度ρtを測定したところ、応力振幅Δσとの間にΔσ/G〓1【c^(-0.5)】,Δσ/G〓ρ【t^(0.5)】の関係があった。 2.表面疲労き裂発生伝播への画像処理応用 従来の顕微鏡観察からは測定が困難であったき裂発生と伝播経路の観測をパーソナルコンピュータ画像処理を用いて検討した。(1)き裂としての特徴がはっきりしているような鮮明な画像に対しては、開発した画像処理を実行することにより、き裂経路(長さ)の自動計測がほぼ可能である。(2)新提案のパラメータとしてのき裂蛇行比Rd,き裂発生角度【θ_1】,き裂伝播角度【θ_2】を用いることにより、き裂発生伝播の状態を表すことができる。【θ_1】はすべり特性の影響を、【θ_2】は結晶粒径の影響を受け、Rdはその両方の影響を受けることがわかった。(3)き裂の発生寿命Npのばらつきを2母数ワイブル分布で表示し、ばらつきの種類を変動係数で表示した。NiとNpのばらつきは結晶粒径Dが小さいときに大きくなるが、より大きなDでは減少した後、粒径の増加とともに増加する。なお、すべり特性の影響をみると、積層欠陥エネルギの増加とともにNiとNpのばらつきは逆に減少する傾向がある。
|