単位分布力の重ね合わせに基づく影響関数法の手法を開発し、この手法により、熱応力場、残留応力場、あるいは切欠き裂の複雑な応力場等における3次元表面き裂の応力拡大係数(K値)が容易に、しかも精度良く評価できることを示した。本手法によれば単位分布力に対するK値の影響係数Kijを予め求めておくことが必要で、これは一連の3次元有限要素解析を伴う膨大な作業となる。研究代表者はこれまでの研究において 1.平板中の半楕円表面き裂 2.平板中の4分の1楕円表面き裂 に対して、Kijのデータを作成したが、本研究においてはさらに、 3.丸棒中の半楕円表面き裂 4.パイプの軸方向内面半楕円表面き裂 に対して、一連の3次元有限要素解析を行い、Kijのデータを充実させた。 これらのKijのデータを用いると、複雑な応力場における表面き裂の応力拡大係数が簡単な重ね合わせのアルゴリズムにより求められることを示し、具体的な応用例を示しした。 さらに、これらKijのデータをデータベースとしてパソコンのフロッピディスクに収め、ユーザーはき裂のない部材の応力分布とき裂形状の入力だけで、極めて容易にK値が求められるパソコンによるK値評価システムの開発を行った。 また、疲労き裂伝播に関するパリス則の積分に際して上記システムを組み込むことにより、複雑な応力場での疲労き裂伝播寿命の評価が簡単に行えることを示した。 次年度はさらに、確率破壊力学の手法を組み合わせて表面き裂部材の信頼性評価へと発展させていく予定である。
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