研究概要 |
板厚方向にのみ非定常温度分布および不均質性を有する不均質板の非定常熱応力問題および不均質体からなる多重連結領域の非定常熱応力問題の定式化とその解析法の研究、また、これらのFRM板の非定常熱応力問題への応用という研究計画のうち、昭和61年度分として定式化とその解析法を提案するという段階において一応の成果が得られたので以下にそれらを列挙する。 1.板厚方向にのみ非定常温度分布と熱伝導率,ヤング率の不均質性をもつ不均質板の非定常熱応力を厳密に、しかも簡単に計算しうる理論式を提案し、熱伝導率、ヤング率が板厚方向に指数関数的に変化する場合の非定常熱応力式を導出した。また、数値計算を行って熱伝導率が高温側に向って急激に小さくなる程、またヤング率が高温側に向って急激に大きくなる程、高温側で生じる圧縮熱応力の絶対値が飛躍的に大きくなり、なかでもヤング率の不均質性が非定常熱応力分布に顕著な影響を示すことを明らかにした。 2.不均質体からなる多重連結領域の非定常熱応力問題を応力関数法で定式化し、差分法にて数値解析する方法を提案した。そこでは、不均質体からなる多重連結領域の非定常熱応力の解析に必要な回転と変位の一価性の条件式が誘導された。具体的な多重連結領域の第一例として、一座標系の座標曲線によって厳密に表現できる矩形穴をもつ矩形領域を、また、第二例として二座標系以上の座標曲線によって初めて表現しうる境界曲線をもつ例である円孔を有する矩形領域をとりあげた。第二例においてはデカルト座標系と極座標系の両方の差分格子を併用することにより少ない格子数で正確な結果が得られる方法を示した。また、数値結果から、ヤング率,線膨張係数の不均質性が熱応力分布に大きく影響することを定量的に明らかにしている。
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