FRP(SMC)材料の疲労破壊機構の解明を目的に、金属顕微鏡による微視的損傷の直接観察、剛性保持率による機械的性質の変化の定量化、および本研究補助金により購入したアコースチック・エミッション装置による破損音響の計測を行なった。得られた結果を以下に要約する。 1.新しい剛性保持率の評価法を導入した結果、疲労寿命に対する、初回負による静的損傷の影響を検討することが可能となった。その結果、SMC材料の疲労寿命は、低応力負荷では疲労損傷の生成が、高応力負荷時は疲労損のみならず、初回負荷時に生ずる静的破壊に依存している事実を明らかにした。 2.剛性保持率のばらつきの様式が、同一繰り返し数を基準とした場合には、常に正規分布であり、また、同じ剛性保持率に達するに要する繰り返し数を基準とした場合には、常に対数正規分布することを確認した。 3.表面において観察されるき裂の生成に着目し、その定量化を試みた結果、剛性保持率とき裂の量とが直線的に対応するものの、異なる負荷条件での結果を比較すると、同一き裂量であっても剛性保持率が異なることがわかった。そこでこの原因を顕微鏡観察により調べたところ、負荷応力の高低で、材料内部でのき裂成長機構が異なるためであることを、明らかにした。 4.アコースチック・エミッション法により、繰り返し回数の増加にともない、AE発生個数の異積数、AEエネルギ量ともに直線的増加が確認された。これらは、機械的性質すなわち剛性保持率、の変化に相い対する現象である。しかし、これらAEの結果は、試験片毎で、また負荷応力毎でばらつきが大きく、現在統計的処理を行なえるよう研究を進めている。 5.研究成果の一部は、日本機械学会関西支部第62定期講演会(3月13日)で、要旨講演論文として発表した。
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